レインウエアメーカーとしてお客様から様々なご相談をいただきますが、よくあるご相談、時にクレームの1つに「レインウエアを着ていたら全体的に水が漏れてきた」というお話があります。これを経験談を含めて解説してみます。
着ていた服がビショビショだった
着ていたレインウェアを脱いでみると、着ていた服がびしょ濡れになっている・・・という経験はありませんか?
私は以前、花火大会で急な雨に降られたので、ちょうどリュックサックに入れていたレインウェアを着てみました。駅は急な雨で中止になった花火大会の会場から帰る人でごった返し。次の駅まで歩こう・・・と、あれよあれよと1時間もレインウェアを着て歩いてしまいました。やっと人も少なくなり、電車に乗ろうと着いた駅の改札口前で着ていたレインウェアを脱ぐと・・・なんと着ていた服がびしょ濡れ!
こんなに全体的にびしょ濡れということは全体的に雨が漏れてきたのでしょうか!?
汗と雨水の温度の違い
レインウェアには永遠の課題が2つあります。
それは、「 水 漏 れ 」 と 「 ム レ 」です。
レインウェアの不満や不都合な話、課題はたくさんありますが、この2つの課題は他の課題を寄せつけない永遠の課題です。この課題がなぜ生まれるのか? 考えてみると、レインウェアは雨水が漏れないように生地や縫い目やデザインとあらゆる箇所をしっかり仕立て「水漏れ」対策をしていることでサウナスーツのような状態になってしまい、少し歩いただけでも汗が出てきてしまう「ムレ」という課題を生んでしまいます。
では、レインウェアを脱いだ時、着ていた服がびしょ濡れになったのは「水漏れ」でしょうか?
それとも「ムレ」でしょうか?
その疑問に対する回答に「汗と雨水の温度の違い」があります。
ムレというのは汗ですね。
汗は体内から出るものですから「体温に近い温度の水分」です。
一方、雨水は、上空から降る水分で「冷たい水分」ですよね。
この2つの水分の温度の違いは身体に触れた時、どのように感じるでしょうか。
汗の場合は体温に近い温度の水分ですから「存在すらも感じない」かもしれません。
一方、雨水は冷たいですから「冷たい」とすぐに反応してしまうかもしれません。
花火大会の会場から駅の改札口まで歩いている時はどちらだったかなと思い返すとそれは濡れていることすらも感じないという印象で、
その水分の存在すらも感じていませんでした。つまり、それは「ムレ」だったのですね。
その製品は不良品なのか ~メーカーの見解~
最後にレインウェアメーカーとしての専門的な見解を1つ補足させて下さい。
例えば「全体的に水が漏れてきた」という場合、疑うべき欠陥箇所は間違いなく「生地」です。
つまり生地不良という欠陥になります。生地不良の場合は、同じ製造年月日で生産された別の製品も検査することになります。
ただ、検査する以前に、同じような声を上げるお客様が多数出てきます。
「このカッパは雨が漏れてくる!!」という声がたくさん出てきます。現実にそういう事例も過去にはありました。
しかし過去の事例は、生地不良というよりも生地の性能がお客様のお求めの水準にまで達していないことが原因でした。(防水度)
つまり、生地不良の場合には1着だけの問題ではなく、同じ時期に同じ生地で生産された他の製品にも同じ状態が表面化するという生産原理があることから、1着だけ生地不良の製品が出るという事は生産上、とても考えにくいことです。